はじめに
賃貸物件を所有する大家さんにとって、賃借人との立退き交渉は避けられない課題です。スムーズに進めたいものの、交渉がこじれることも多く、法的な知識や効果的なアプローチが欠かせません。この記事では、大家さんが押さえておくべき立退き交渉の基本原則や準備、実践的なアプローチについて解説します。
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立退き交渉の基本原則
立退きとは
立退きとは、貸主が契約を終了し、賃借人に建物や土地を明け渡してもらうことを指します。貸主が、契約の解約を申し入れたり、更新拒絶したりして、建物や土地の明け渡しを求める場面、このような際に、立退きという言葉を使います。
立退きの根拠と判断枠組み
先ほどの場面からお察しの通り、契約を一方的に終了させるわけですから、その根拠が必要ですね。
その根拠となるのは、一般的には、契約書と法律です。
ただし、立退きの場面では、契約書の文言に優先される法律があるため、法律をおさえておくのがポイントとなります。その法律は、借地借家法(旧法含む)です。すなわち、借地借家法の枠組みに基づいた判断をしていくことになります。
大家さんが意識すべきポイントとメリット
大家さん、すなわち、建物の貸主を例にした場合におさえるべきポイントは、借地借家法に記載されています。
借地借家法は、以下のようにポイントを示しています。
- 建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む)が建物の使用を必要とする事情
- 建物の賃貸借に関する従前の経過
- 建物の利用状況
- 建物の現況
- 建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えとしての財産上の給付
このような書きぶりからすれば、そのポイントには優劣、重みに差がありそうです。具体的には、中心的考慮要素が〈1.建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む)が建物の使用を必要とする事情〉、補充的考慮要素が〈2.建物の賃貸借に関する従前の経過〉ないし〈5.建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えとしての財産上の給付〉といえそうです。
なので、1.がない場合には、2.ないし5.を検討するまでもなく、立退きができない!なんてこともあり得るかもしれません。
立退きが成功すれば、不動産の資産価値を高めることも可能です。
例えば、テナントが不動産の減価要因となっている場合や、将来的な計画の支障になっている場合に、立退きは大きな利益をもたらす可能性があります。
交渉前の準備と注意点
交渉前のリサーチと準備の重要性
まずは、交渉の前にしっかりとリサーチを行いましょう。
また、前述の①から⑤を充たすか否かのチェックをしましょう。特に賃借人がその建物を使用する必要があるかどうか、これは最重要のリサーチ項目です。
賃借人が何を求めているかの理解
また、賃借人が何を求めているのかを理解することも不可欠です。単にお金が支払われれば退去するというわけではなく、賃借人の意向に寄り添ったアプローチが必要です。
交渉の背景として裁判で勝てるかどうかの考慮
最悪の場合、法的手続に移行する可能性も考慮する必要があります。勝訴の可能性があるかをしっかり検討し、どの段階で訴訟に移行するかを判断するための基準を設けておきましょう。
交渉の実践的アプローチ
実際の交渉の場では、賃借人にさまざまなメリットを提案することが有効です。
例えば、立退料の積み上げ、代替店舗の提案、賃料減額・免除や敷金の全額返還、引越し費用の援助などです。重要なのは、賃借人のニーズに合った提案を行うことです。
交渉での心構え
交渉は相手があることですので、必ずしも思い通りには進みません。そのため、交渉が成立すればラッキーくらいの気持ちで臨むのが精神衛生上良いでしょう。
加えて、万が一、法的手続に移行する場合に備え、建物の老朽化具合を立証する資料や土地の有効利用計画を準備しておくことが重要です。これにより、訴訟での敗訴リスクを減らし、スムーズな交渉が期待できます。
まとめ
立退き交渉を成功させるためには、法律的な知識に加え、交渉前の準備と賃借人のニーズに合った柔軟な提案が不可欠です。しっかりと準備し、冷静に交渉を進めることで、双方にとって納得のいく結果が得られるでしょう。