はじめに
借地権に関する問題でお悩みの方は少なくありません。
特に、地主との交渉が難航してお悩みという方が、多く見られます。
そこで今回は、このような借地権に関する紛争を解決する手段として、借地非訟手続について詳しく解説していきます。
実務に携わる弁護士として、その仕組みやメリット、費用までを分かりやすくお伝えしてまいります。
※同様の内容でYouTubeにも動画を公開しております。
借地非訟手続とは
借地非訟手続は、建物用の借地権に関する紛争を解決するための法的手続です。
借地借家法に基づいて行われ、主に以下の5つの類型があります。
- 借地権(土地賃借権)譲渡または転貸の許可申立事件
- 借地条件変更申立事件
- 増改築許可申立事件、(更新後の)建物再築許可申立事件
- 競売または公売に伴う土地賃借権譲受許可申立事件
- 借地権設定者の建物及び土地賃借権譲受申立事件
借地非訟手続を利用するメリット(総論)
借地非訟手続には、大きく2つのメリットがあります。
公正性と一方的解決
当事者間の交渉が難航し、時機に遅れビジネスチャンスを逃すリスクがある場合でも、裁判所の判断を得ることで、公正かつ一方的(強制的)な解決を図ることができます。
和解による早期解決
実務では、裁判所の判断を待たずに和解で解決するケースが多くあります。
双方の譲歩による和解は、円満な解決につながりやすく、タイムパフォーマンスやコストパフォーマンスの面でも優れています。
借地非訟手続を利用するメリット(各論)
賃借権譲渡または転貸の許可申立事件のケース
借地非訟手続は、例として次のようなケースで検討されます。
- 空き家となっている建物の有効活用
- 借地権の金銭的換価
- 不動産投資家や事業会社による利活用
以上から明らかな通り、借地権は経済的利益を生み出す可能性があるのです。
他方、地主は、従来の人的関係を重視する傾向にあるため、第三者への譲渡に不安を感じるケースが多く見られます。
このような場合、交渉は難航しますので、裁判所の判断を仰ぐことで解決を図ることができます。
その他の事件における活用
不動産の有効利用計画の一環として、以下のような青写真をお持ちの方は一定程度でいらっしゃると思います。
- リフォーム後の賃貸
- 民泊施設への転換
- 建物の再築
- 経済合理性を考慮した投資計画の実現
これらのアイデアを実現するために、先述した手続きが役立つのです。
- 借地条件変更申立事件
- 増改築許可申立事件、(更新後の)建物再築許可申立事件
このように、借地非訟は不動産の有効利用計画の一部として非常に有力な手段となります。
5. 手続に要する費用・相場
主な費用は以下の3つです。
- 弁護士費用
- 申し立て手数料
- 地主に対する承諾料
承諾料の相場は、ケースバイケースですが、実務本によればおおよそ以下の通りです。
- 借地条件変更:更地価格の10%
- 建て替え:更地価格の3~5%
- 建物の一部増改築:増改築の規模にもよるが、概ね更地価格の1%程度
- 借地権の譲渡:借地権価格の10%
6. まとめ
借地非訟手続は、借地権に関する紛争を解決する有効な手段です。
主なメリットとして、以下のようなものがあります。
- 総論:公正性、一方的解決、早期解決
- 各論:選択する手続によるが、不動産の有効利用計画など一連の計画にも有効活用可
- 承諾料は、ケースバイケースだが、一定の傾向あり
ただし、この手続は専門性が高く、地主との慎重な交渉も必要となります。
そのため、この手続を検討されている場合、弁護士への相談を推奨します。 適切な専門家のサポートを受けることで、円滑な問題解決が期待できます。