はじめに
国土交通省によると近年、高齢者(世帯)を中心として、不動産売買・リースバックが活用された消費者被害やトラブル事例が増えているとのことです。
そこで、今回は、高齢者の不動産売買の被害事例やその救済方法について見ていきましょう。
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高齢者の不動産売買の被害事例
事例としては以下のようなものが挙げられます。
- 強引な勧誘で不動産の売買契約をしてしまい、後々解約を申し出たら高額な違約金を請求された。
- 市場での取引価格より著しく低額な代金で売却してしまった。
- 買戻しができると聞いた。しかし、法的に買戻しができないようになっていた。
- 認知症の診断がある高齢者に、突然不動産業者が訪問。セールストークに押され、いつのまにか契約を締結していた。
高齢者の不動産売買事案の救済方法
高齢者側の立場に立った際に主張することとしては、以下の構成が考えられます。
- 意思能力がなかった(すなわち法的に無効)と主張する。
- (意思能力がなかったとまでは言えなくても)公序良俗違反無効であると主張する。
- 錯誤、詐欺、強迫であったため契約を取り消すと主張する。
- 不実告知や断定的判断の提供など消費者契約法違反であるため契約を取り消すと主張する。
不動産売買の意思能力
先ほどでてきた意思無能力については、医学的評価(例: 認知症の有無と程度)とそれに関わる証拠資料が重要です。
例えば、証拠資料としては、医師の診断書、診療録(カルテ)が重要となります。
そのほか、契約締結時の年齢、契約の動機、契約締結前後の事実経緯、行動、判断及び取引内容の客観的合理性などが判断材料になります。
不動産業者が意思無能力などを後で争われないためにできること
また、不動産業者が意思無能力などとしてあとで契約の有効性等を争われないためにすべきことは以下の通りです。
- 売買契約前に通院・介護状況について確認しておく。
- 会話で意思確認を行いつつ、録音しておく(実子などを同席させて契約を行うこともある。但し、これは法的なリスクヘッジというより、事実上のリスクヘッジに過ぎない)。
- 司法書士に、決済時に意思能力について確認してもらう(紛争時は証人になってもらう)。
- 公証役場において、公証人関与のもと、公正証書で売買契約書を作成する。
まとめ
被害の実態認識
高齢者を狙った不動産売買に関連するトラブルが増加しており、これには高額な違約金請求や不当な低価格での売却などが含まれています。
救済方法の重要性
意思能力の欠如、公序良俗違反、契約取消しの主張は、不利な契約からの救済に不可欠です。
意思能力の判断基準の理解
認知症の有無、契約締結時の行動や判断の合理性は、意思能力を判断する際の重要な要素です。
不動産業者のリスク管理
契約の有効性を確実にするため、業者は通院・介護状況について確認、意思確認の実施記録、公正証書の作成などを行うべきです。
以上、高齢者との不動産売買の注意点でした。